少し前のことになりますが…。
当工房を主宰する
ミスター・ユニバースでは
古都鎌倉の出版社
港の人さんの装幀を何冊か手がけています。
以前にも、こちらで活版印刷による詩集のお知らせを
いたしましたが、今回は歌集の装幀を手がけました。
本文は内外文字印刷さんによる
岩田明朝体が美しく刷り上げられています。
歌集というと、古臭くて、堅苦しいイメージで
捉えておられる方も多いと思いますが
2008年に第54回角川短歌賞を受賞した
光森裕樹さんによるこの第一歌集は、
ゼロ年代の新鋭歌人と評されるだけあり、
私たちの世代にとっても親しみやすい
日常のテーマをとりあげながら
独特の陰影のある、とでも言いましょうか、
湿度を伴った視線で詠まれる短歌は
心地良い余韻があります。
発売当初から、
朝日新聞の歌壇欄や、
書評欄では同じ歌人である穂村弘さんに
取り上げられたり、
その他幾つかの新聞に取り上げられ
話題となっているようです。
内容の紹介はこちらやこちらにお任せしまして、
ここでは造本についてご紹介したいと思います。
本文は前述のとおり
内外文字印刷さんによる
金属活字活版印刷。
芯紙は薄目の地券紙、そして角背。
カバーも帯も栞もありません。
シンプルでストイックな造本ですが、綴られた歌の余韻を
感じられるよう、ひばりが浮かぶ5月の空を思わせる
柔らかな色と、手の匂いを感じる描線で包みました。
真美堂手塚箔押所さんによる
きりっとした箔押し。
美しい歌集となりました。
2010年の現代に、
このような良書が活字活版印刷により仕上げられ、
多くの人々に手渡されるお手伝いを
させていただいたことがとても嬉しいです。
大きめ書店や、BK-1、アマゾンでも買えるようですが、
好評のため、版元の港の人さんでも
在庫僅少となっていると聞きました。
また、現在千駄木の往来堂書店さんでは
港の人フェアを開催中だそうです。
「鈴を産むひばり」ほか、
港の人さんの美しい本たちが並んでいるとのこと。
お近くの方は是非足をお運びください。
僕も時間を作って伺いたいと思います。
ミスター