活版印刷のこと

活版印刷のこと

亜鉛凸版

これは、2009年に制作した、B6判16ページのSyuRoさんのコンセプトブックの印刷に使用した亜鉛凸版です。
四六4裁判(B3相当)に面付けをし、片面フルカラー、片面活版印刷で、中綴じにすると、右ページは文字、左ページは写真という見開きの冊子が出来上がります。
本当は活字組版で作りたかったのですが、コストと時間の関係もあり、叶いませんでした。とはいえ、B3サイズという大きなサイズでの製版、しかも亜鉛板でとなると技術的な難易度は飛躍的にあがり、引き受けてくださる製版所さんを探すのも大変な苦労をしました。
様々なつてを辿って、行き着いたのは太陽堂写真製版さんでした。お電話をして、実際に伺い、何度か打ち合わせを重ね、出来上がりのご連絡を受けて渡されたのが、この版です。
見事でしょう。キリッと土手が立ち上がったこの版は、強度的にはやや不安があるものの、この時代に、大きなサイズでこのようなシャープな版が出来上がることに、強い衝撃を受けたことを覚えています。
「一体どのようにして?」失礼な質問だったかもしれないなと思いつつ、聞かずにはおれませんでした。その答えは「丁度雨が降ったんだよ」とのこと。あめ? 
製版の際には薬品の温度を一定に保っておく必要があり、天気だと陽の加減で生ずる気温や湿度変化が、少なからず薬品の温度に影響を与えるそうで、大きなサイズだと、温度のムラができやすくなるため、どうしても、一様に腐食させるのは大変困難だとか。
「いちばんいいのは、梅雨。何日も雨が続くときに、いいハンコができますよ」と教えてくださいました。
この亜鉛板を、小社でいちばんお世話になっている台東区の活版印刷の大伸さんに持ち込み、見ていただいた所、「見事だねぇ〜」と、驚かれていました。ただ、土手が少ないことで印刷中に欠けたりしないか、心配されていましたが、最終的には見事な冊子に仕上げてくださいました。
亜鉛板はこれだけ大きいと、印刷機から取り外す際に少し歪むので残念ながら再利用はできませんが、またいつか、こうしたハンコで冊子を作れたらなぁと時々思い出します。


亜鉛凸版

冊子は、もう手に入れることはできませんが、小社のwebサイト“works”にて見ることができます。他にも大伸さん印刷によるショップカードやDMなどもあります。よろしかったら御覧ください。



活版印刷によるポスター3連

さて、続いてこちらはB3サイズのポスター。大伸活版印刷さんと2010年に制作したものです。 大伸さんにはB-threeという四六4裁判の印刷機があり、(前述の冊子もこちらを使ったもの)何か作りたいなぁと思い、当時“朗文堂”さん主催のイベントに出展することをきっかけに、同じイベントに出展する予定の大伸さんと、真映社さんにご相談を持ちかけて、半ば強引に(!)実現したものです。
このときは樹脂凸版でしたが、真映社さんの大判ハンコも見事なものでした。 しかし、印刷では力強い表現にするために多用した大きなベタ面と、分厚くてラフな紙肌がネックとなって、なかなかムラがとれず、大伸さん先代のお父様も、印刷機を前にやや苦しそうな表情をされていました。一枚ずつ紙を通しては、ムラを見て、調整。を繰り返し、連続してうまくいくことがあれば、まったくうまくいかないこともありの連続。一日かけて1色刷り、乾燥させ、翌日次の色をのせ(そこでもやはりヤレ(失敗)は発生します)、ようやく完成したのがこの3枚組です。
そんなことを思い出していたら、うずうずと何か作りたくなってきました。その時は、大伸さん、またよろしくお願いします!



ポスター 拡大1

ポスター 拡大2

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