ミスター・ユニバースが手がけるデザインは、広告ポスターやリーフレット、書籍の装幀、WEBサイトなどのかたちで、皆さんの目に触れます。「成果物=デザイン」と捉えられることも少なくありませんが、成果物は結果の一部分に過ぎません。
製品の発売を告げる広告ポスターや、大きなビルボード、物を運びやすく、売りやすく、買いやすくするパッケージや、美麗な画集。それらの目的は、原則的には情報を伝えること、そして物やサービスを売ることです。定められた条件の中に、的確なメッセージを込める。そのためには、製品やサービス、情報の価値や魅力を掘り下げ、受け取り手となる人々との「共感」を確かなものにするストーリーづくりや、人と人、モノやコトを結ぶコンセプトの立案が欠かせません。そうしたコンセプトを元に、あるときは楽しく、あるときはため息が出るほど美しい「かたち」を持たせ、「メッセージ」を伝える器として世の中に送り出します。広告でも書籍の装幀でもリーフレットでも、成果物の手前にある、「思い」を見つめ、育むことから始め、「送り手」と「社会」を結ぶ。それが「デザイン」です。
大量消費を前提とした大量生産と、市場経済の発展は、効率化を推し進め、暮らしは便利になりました。物資の乏しい時代を知る人は「豊かになった」と言います。
一方で、大量生産で安くなったものと引き替えに、途絶えてしまった技術や職があると言います。燃料や建材、暮らしの場として、人とともにあった里山は、暗い山林となり、人も入らず、間伐された樹木が引き取り手も無く横たわります。小さな星々が無限に降り注いだ夜空は、昼夜無く働き続ける都市の明かりにかき消され、今や遠くの世界の出来事のように感じられます。発展と共に途絶えてしまったものたちは、「豊かさ」には不要なものだったのでしょうか?
私たちを取り巻く状況に様々な綻びを見出す度、「これでいいのかな?」と感じるのです。
そして、市場経済と共に歩んで来た「デザイン」もまた、その在り方を問い直す時期ではないか、と私は思うのです。
これまでの、大量消費を前提とした社会経済活動を振り返り、限られた資源と自然の自浄能力を人類共有の財産とし、地球に暮らすことの在るべき方向性を示した、国連「環境と開発に関する世界委員会」による「持続可能な開発」という理念は、私たちがどのようにして、「現在」を「未来」へと手渡すべきかの議論を促すもので、様々な分野で模索が続けられています。私たちの仕事であるデザインも、「人々の役に立つ」という技術本来の目的に立ち戻り、多様な「豊かさ」を育み、持続可能な社会を見据えた価値観を持つ人々や企業を、デザインという技術で支えることで、今の世界に生きる人々のみならず、健やかな未来へ貢献する。それが、これからのデザインに課された使命ではないかと考えています。
ミスター・ユニバース 關 宙明
Creative Directer / Art Directer : 關(関)宙明 Hiroaki Seki
1969年東京生まれ。都立工芸高校デザイン科卒
日経広告賞生活関連部門 部門賞 / 韓国国際ポスタービエンナーレ入選 /
造本装幀コンクール 日本印刷産業連合会会長賞 /
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
Project Manager : 浜田美樹 Miki Hamada