誰も知らない太宰治 装幀
太宰治・初代夫妻と住まいを共にした飛島家、その長女蓉子氏が、父母から繰り返し聞かされた素顔の太宰治を描くエッセイ集です。
原稿を読みながら、大沼ショージさんが手刷のローラーで刷り上げた、『石』というアートワークを思い浮かべていました。
オリジナルのアートワークは墨を用いて白い紙に刷られたものですが、墨を銀に置き換え、漆黒の上に刷り上げることで、月の光を鈍く反射する川の水面のイメージとなるのではないかと考えたのでした。
銀と黒のコントラストを強調するため、一番濃いスーパーブラックを使い、銀の厚みを出すため2度刷りを行いましたが、逆に平坦な印象になってしまったため、最終的に銀1度刷りとすることで、水面のうねるような「流れ」の表現が可能となりました。
タイトルは白箔を使い、ノセではなくヌキアワセとすることで、強いコントラスを得ました。
本文用紙は、ピンクがかった中質紙。中質紙は、同じ斤量の他の用紙に比べて厚いため、束を増やすことが出来ますが、その見た目に反して物理的に軽く出来るため、カバーの「重い」印象と、持ち上げたときのギャップを生み出しました。
この装幀について、「デザインの引き出し」編集長、津田純子さんがコラムで取り上げてくださいました。
2016-12-20 master 本のはなし