本のはなし⑤ 夜の甘み

本のはなし⑤
夜の甘み

夜の甘み 装幀

夜の甘み 装幀


夜の甘み
伊藤啓
2010年 港の人

原稿を読んでいてふと思い浮かんだのは、少女が机に向かって何か一人遊びをしているイメージでした。さて、何をしているのかなと覗き込んでみると、ぼんやりと浮かんできたのが、凹凸のあるものに薄い紙を置き、鉛筆でこする遊びで、「フロッタージュ」でした。
たぶんほとんどの人が、10円玉や、5円玉などの硬化で遊んだことがあるのではないでしょうか。
さて、このフロッタージュ、いざ作ってみると意外と難しかったことを覚えています。活版印刷でお世話になっている製版所さんに、樹脂板で凹版を作ってもらい、鉛筆で擦ってみますとと、角の部分のみ濃く、イメージしていた印影とならない。樹脂では角の部分にかかる力を面で受け止めてしまい、そこだけ鉛筆が強く載ってしまったのです。
それではと、次に亜鉛腐食版を発注。今度はうまくいきました。
書体は写植のILMA(岩田細明朝体)を使い、印刷後、文字部分を空押しし更に凹ませています。
鉛筆をイメージしたグレーについては、どの程度の濃度が一番しっくりくるのか、何度もシミュレーションを重ねましたが、色チップ指定による校正刷りではイメージに合いませんでした。
そこで、本番印刷に立会い、インクを練ってもらうことに。最終的には「え?」と思うほどメジウムを使って薄めた色になり、色チップでの指定も万能でないことを感じました。
正木香子さんが、ご自身のコラムで素敵な書評を書いてくださいました。

デザイン詳細

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