少し前の話となりますが、今年の6月、御徒町の家具工房“
WOODWORK”さんのWEBサイトリニューアルを行いました。
ウッドワークさんとは2007年のブランドリニューアルからのお付き合いで、ロゴから店舗装飾、ショップカードやカタログ、包装紙や幾つかのプロダクトまで、色々なかたちでお手伝いをさせていただいています。WEBサイトも、2007年時より制作に携わりましたが、現コンテンツのひな形となっているのは2010年の大型リニューアル時のもので、その内容は、固定コンテンツの総ページから考えても、当時では単一店舗が持つものとしては考えられないほど充実したものでした。
しかし、それから5年も経つうちに、閲覧媒体がPCから、iPhoneを代表とする手のひらの機器へと移ります。そのスピードは想像以上のもので、ウッドワークさんのようなBtoCが中心の業態に於いては、サイト設計の再定義は常に懸案事項でありました。
今回のリニューアルでは、基本コンテンツは既存のものを活かし、閲覧媒体に最適化するためにレスポンシブとし、各コンテンツに使用する写真の解像度を、倍以上に拡大しました。製品カタログページの、Factory Rackとセレクト雑貨、木の小物の一部を除くほとんどの写真は、2010年に、ブローニーと35mmのネガフィルムを用いて、店舗地下の工房で撮影したもので、WEB制作で500を越えるカット数をフィルムとは、我ながら常軌を逸しているなぁと思ったものでしたが、今回改めて見て、当時丁寧にコンテンツを積み上げたこと(写真だけでなくブログやお知らせを除く固定コンテンツのテキストもほぼ当時からのもの)、その価値と意味を再確認しました。
新しい試みとしては、WEBフォントの導入です。常々、閲覧媒体ごとに違う書体の見え方をどうにかできないものかと思っていましたが、見え方にこだわりすぎれば、SEO(検索エンジン最適化)に逆行することの懸念がありました。そこでWEBフォント技術の動向を見守っていたところ、昨年頃からフォントワークスやモリサワなど、大手フォントベンダーが、本格的に幅広い和文WEBフォントの提供を開始、表示時間もストレスがない位まで進歩したことを見据え、全面的に導入しました。通常の通信環境であれば、PCではOSX、ウインドウズ、スマートフォンではiOS、アンドロイドにかかわらず、ほとんどの明朝体は、筑紫Aオールド明朝、ゴシックは筑紫オールドゴシックBで表示されているはずです。これはSEOには勿論、更新のしやすさ、カタログ等の印刷媒体とWEBでのイメージブランディングの距離を縮める施策として機能するはずです。
画期的な動きがあったり、驚くようなムービーがある訳ではありませんが、ウッドワークさんとお客さまを繋ぐ架け橋として、シンプルで機能的な彼らの生み出す家具製品と肩を並べて恥ずかしくない、長く使える日常の道具としてのWEBサイトが仕上がったのではないかと思います。
WEBサイトを通じてより多くの皆さんが、彼らの素晴らしい家具と出会っていただけたら幸いです。
もう1件は、吉祥寺の花店“gente”さん。こちらは9月半ばのリニューアル公開となりました。
こちらも元は2007年小社制作のもので、フラッシュを使ったトップページでは、うさぎが飛び跳ねるアニメーションをつけるなど、遊び心に富んだものでしたが、随分前からフラッシュはセキュリティの脆弱性などがあり、現在ではデフォルトで対応するブラウザもほとんど無くなりました。
上は旧サイトのデザイン。
今回のリニューアルでは、写真をふんだんに使えるようにすることを中心に、フレームを古いMovableTypeから最新のWordPressへ変更し、モバイル閲覧への対応を基本に、簡便でシンプルに更新可能な構造へと改訂しました。
アイコンに使用しているイラストは、イラストレーターの溝川なつ美さんにお願いしています。現在雑誌や書籍などの装画で活躍している溝川さんも、2007年当時はミスター・ユニバースでデザイナーとして働いており、当時制作のwebサイトのデザインも、溝川さんによる、可愛いイラスト満載のものでした。今回のリニューアルでも、genteの店主である並木容子さんから「できるだけ残して欲しい」というリクエストをいただいたこともあり、今の形となりました。
可憐にして瀟洒。genteさんの花を形容すればこのような言葉になるでしょうか。そして何よりピンと元気です。お店には花の生命力が満ち溢れています。吉祥寺へ訪れた際には、是非お立ち寄りください。
最近はwebのご相談も随分と多くなってきました。自分でもスマートフォンを使いますし、この辺の変化は当然のことでしょう。また、通信環境の技術向上から、SNSなどの流れもあり、写真はより大きく、そして動画を使うことも当たり前、一層ビジュアルへの要求の高まりを感じます。
ミスター・ユニバースは、紙媒体のデザイン事務所と捉えている方も少なくないと思いますが、webでの表現に於いても、紙媒体で培ったコミュニケーションの手法や技術を活かすことで、より共感を生む媒体づくりが可能ではないかと考えています。これから、ビジュアルでの表現が要となっていきますが、根本には、しっかりとした企画と、それを実現するクオリティの高い技術が必須であることに時代の変化はありません。送り手と受け手を結ぶメッセージづくりを中心としたコミュニケーションを大切にしながら、これからも、沢山の皆さんのお手伝いをしてゆきたいと願っています。