落葉松の林を過ぎて

落葉松の林を過ぎて

落葉松林 雪景

冬の山に行きたかった。
場所は信州。秋に「さびしかりけり」と白秋が詠んだ信州のからまつ林は、冬には深い雪に覆われる。

落葉松林 雪景

落葉松林 雪景

落葉松は、唐松とも書くが、文字通り落葉する日本の針葉樹では唯一の樹種。細かな雪の降り始めた山に登ると、谷間からごおと風の音が響き、葉を落した細い枝々の間を通り抜け、ひゅうひゅう鳴る。白とグレーで構成された水墨画のような世界が視界に広がると、それまで感じていた身体の重みがなくなり、存在そのものが白の中に溶け込んでしまったようになる。

落葉松林 雪景

落葉松林 雪景

心細いという感じではなくただ溶けてゆく。水に深く沈んだような感覚に近い。無性にこの感覚が恋しくなることがあり、旅の時期を知ることになるが、現実は思うようにいかないと、ささやきにけり。


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