最近できたもの

最近できたもの

 
 

気がつけば9月も後半…。
 
色々なものがまだ途中ですが、
最近仕上がってきた2冊をご紹介します。
 

8.huitの料理 小さなワインバーユイットのおいしい料理とおすすめワイン

料理研究家平野由希子さんが、昨年大井町にオープンした
ワインバー「8.huit」で提供する料理を一冊にまとめたものです。
 
 

 
  
 

 
 


 
 
 
著者の平野由希子さんは、ご存知の方も多いと思いますが
とてもチャーミングで魅力的な女性。
何をするにもセンスが良く、ご一緒する内にすっかりファンになりました。
2ヶ月に渡る撮影を担当する永禮賢さんとも、平野さんは雑誌の連載で
長くご一緒されていることもあってか、お二人の息はぴったりと合っていて
笑顔の絶えない楽しい現場でした。
  
今回は単なるレシピの本では無く、
ワインバー「8.huit」という場への誘いでもありますし、
そこで味わう料理とレシピを紹介しながら
そのひとときを、読者の方に疑似体験していただくという主旨ですので、
お店で撮影すれば、まぁ話は簡単。
けれども「気軽に美味しいワインと料理を楽しむ」というコンセプトでまとめられたお店は
「小さなワインバー」という副題のとおり、カウンター6席+立ちのみ、というサイズですので
店舗での撮影はスペースの都合上難しく、平野さんのご自宅(これまた素敵なんです)で
行うこととなりました。
とはいえ、安易にお店を模すような事をしても中途半端になりそうですし、
幸い平野さんのご自宅は自然光が美しく包むお部屋でもありますから、
永禮さんと相談し、お店は気にせずそこで撮れる最善の写真にすることにしました。
そのためデザインでは光源や環境の違う2つの場をつなげることに
工夫が必要となることがわかってはいたのですが、
この時点では「なんとかなりますよ!」と言い切りつつも、
内心(ちょっとだけ)焦っていたのは内緒です。
 
扉のページや、コラムのためにお店も撮影しました。
撮影も終わり、本文のデザインをすすめながら、全体の配分が見えてきた時点で、
平野さんという人は見えてくるけどお店の感じがまだ足りない。
けれども、お店の写真をカバーに持ってくることも違うように思うし…。
と、案の定悩むことになりました。が、試行錯誤の末、思いついたのは店頭の黒板。
よくチョークでメニューなどが書いてあるアレです。
それをカバーのモチーフにすることで、結果として2つの場所を繋げながら、
誘いとしてのカバーの役目を作り出すことが出来たのではないかと思っています。
 
さらには撮影の際、編集の笠井さん、この方が素晴らしい造形力を発揮して…
◯◯◯◯(言いたい! けど内緒です)を自作してくださったことも、
2つの場をつなげるのにとても大きな役割を果たしたと思います。
  
 
造本では、気軽にワインと料理を楽しむ感じにしたかったので、
軽い紙を使いたいな、と思い中質紙を候補に上げました。
しかしこの中質紙という紙、ザラッとしていて写真印刷には大変不向きな紙ですから、
編集のKさんにも「大丈夫ですか?」と心配されました。
紙の質感を重視して肝心の料理の写真がくすんで美味しそうに見えなくては台なしです。
そこでテスト製版の際、今回印刷を担当してくださった図書印刷のプリンティングディレクター
丹下さんとじっくりと話しあった上でその可能性を探り、
2種の用紙でテスト稿をとり、行けそうだと踏んで確定したという経緯があります。
印刷条件としてはかなり難しいものであったと思いますが
丹下さん並びに図書印刷のスタッフの皆さんのお力、
そして、弊社の松村もとっても頑張って最後の最後まで粘ってくれました。
撮影、デザイン、印刷の三拍子揃って、huitの世界を堪能できる
美味しそうな本になったのではないかと思います。
 
どうぞ見かけたら手にとってみてください。
 
 

因みに店頭では、(さすがに)帯がついてますので、こういう感じです。
 
 
8.huitの料理 小さなワインバーユイットのおいしい料理とおすすめワイン
平野由希子 著 グラフィック社 刊
 
企画・編集:笠井良子(グラフィック社)
写真:永禮賢
編集協力:佐々木香織
プリンティングディレクター:丹下善尚(図書印刷)
印刷・製本:図書印刷株式会社
アートディレクション:関宙明
デザイン・イラスト:松村有里子
 
 
 
さて、もう一冊。
多くの良書を手がけ、最近では「四月と十月文庫」の創刊や、
飯沢耕太郎さんのきのこへの偏愛ぶりと、それを上回るのでは? と思わせる
ブックデザイナー祖父江慎さんの印刷愛にあふれる造本でも話題となった
「きのこ文学名作選」でも話題を呼ぶ、鎌倉の出版社、港の人さんの
活版印刷プロジェクトシリーズの最新刊です。
 
このシリーズの特徴は、なんといっても本文の印刷を手がける
内外文字印刷さんの活字組版。
オフセットの印刷では味わえない、「本らしい」奥行きを感じます。

 
 
 

 
カバーはオフセットに空押し。
手に持った際の手触りも欲しかったので
フリッターという用紙を候補に上げました。
この紙も、デザインのベースとなるベタの色面を考えると
印刷条件が不利な、ざらっとしてかなり凹凸のある紙です。
ベタを刷ればムラになるのはわかっているのですが、
許容範囲に収まれば、面白いテクスチャーになるのでは? と思い、
入校時には同じようなテクスチャーで凹凸の無いアラベールという用紙も用意していただき、
用紙2種で校正をお願いしましたよ。さぁお立会い。
 
結果としてアラベールはベタが綺麗に出ました。
しかし、選択したのはフリッター。面白いムラが出ました。
ISBNコードなど、細かい部分で部分的に可読性に難が出ましたが
充分デザインで補完出来そうではあったので、こちらをオススメとして
港の人さんと協議の上仕上げへと向かいました。
 
ざっくりとした紙に空押し、
がんだれ表紙に天アンカット。
本文は活字組版による活版印刷。
  
現代にこうした本づくりに携わることが出来て幸せです。
毎回緊張しながら、(そして存分に楽しみながら)デザインをしています。
 
少ない部数を丁寧に作り上げたものです。
どうぞ港の人さんへお問い合わせください。
 
港の人
   
 
 
 
詩への途上で 高橋馨 著 港の人 刊

版面設計:港の人
本文活字活版印刷:内外文字印刷株式会社
装幀+造本:関宙明

 
 

 

 

 

 

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