祝増刷!

祝増刷!

お知らせが遅くなってしまって…。
 
 
今年6月に発売されたBNN新社刊「RETRO FONTS」の装幀を手がけました。
  
 

 



 
 

タイポグラフィの良書は
沢山ありますし
僕自身も結構な数を持っていますが、
そのほとんどは、
「ローマン体」や「サンセリフ体」、
あるい「スクリプト」や「ゴシック」など、
文字の系統を時系列で綴ったものであったり、
特定のデザイナーによるものを集めたり、
はたまた学問として
出来る限り多くのデータを収集したものを
統計立てて分析するものが多かったと思います。
 
560頁に及ぶ大ボリュームの本書を見渡すと、
各時代に思いを馳せながら、
書体から時代の匂いを感じとるだけでなく、
この時代なら、どんな書体? というような
逆引きも出来たりします。
驚くべきことは、前書きにもあるように
その時代「らしさ」を伴った見た目のフォントが
必ずしもその時代に作られたものでは無いということ。
 
あるものは、時代を遡り、
またあるものは、後の時代に関連付けられたりといったことが
多々あるという事実が見えてきます。
これは思ってもみなかった面白さです。
フォントのデザインだけでなく、
ポスターや写真など、多くの図版がありますので
楽しみながら、時代とフォントへの興味が高まります。
タイポグラフィに興味はあるけれども
なかなかその一歩を踏み出せない人にも
大変良い入門書になるのではないでしょうか。
 
 

この本の性格がとってもわかりやすいので
ドイツで原書を出版したハーマンシュミットマインツ社代表による
前書きより引用します
 
 
 フォントは時代精神(ツァイトガイスト)を表すと言いますが、
1960年代のスィングを、70年代の愛と平和を、
80年代のパンクを現代の言葉に訳してくれるのは、一体どんなフォントでしょう?

 グレゴール・シュタヴィンスキーは、過去100年の間に生まれた400以上ものフォントを収集し、
年代様式に分け整理しました。その際、歴史的背景にはあまりこだわらず、
集合意識の中での立ち位置に重点を置きました。
つまり、重要なのはいつ誕生したかということではなく、いつ影響を与えたかということであり、
この2つは決して同時期とは限りません。「Rotis」(P.489とP.495)のように、
誕生と共に流行るフォントばかりではないのです。
 
タイプスペシメンブックのコレクターやタイプデザイナーの方々からすれば、
厳密に考えて「レトロ」ではないと言われるかもしれません。
しかし、本書に収録したフォントはすべて時代のスピリッツを放つものであり、
私たちはこの本を「レトロフォント」と呼ぶことにしました。

 また、この本にはそれぞれの時代にインパクトを与えた書体、今もなお現役の古典書体、
再発見されるべき書体、今まさにリバイバルを迎えようとしている書体などに加え、
できる限りいろいろなフォントを紹介したいという思いで、
普段あまり使用されない何か型破りな方法で手直しが必要な
ディスプレイフォントなども掲載しています。
何よりも選定の際に一番重要視したのは「見た目」です。

後略
 
 
是非、書店でお見かけの際は
手にとってみてください。
 
 
今回の装幀では、編集のYさんより
若いデザイナーの皆さんに手にとっていただきたいという強い思いから
「自分の本棚に飾りたいと思える格好よさ」
「新鮮な見え方」にしたいとの要望がありました。
それを受けた上で僕は、若い人にとってのフォントは
CD-ROMでインストールし、ディスプレイでレイアウトするもので、
完成度が高いものほど、人が描いたものとしての
認識は薄いのではないだろうかと思い、
「手」の跡をつけたいと思いました。
具体的には、帯のように見える本書下部の文字は、
ラフなレタリングです。
 
先人たちの技術に敬意を込めて
本書に収録された書体から主に古いものから
代表的なものを手描きで書き起こしました。
 

実際に描いてみるまでは、
どれほどの効果が出るかわからずに
とにかく「やり遂げる!」の一心で
数日徹夜となってしまいましたが、
試作を重ね出来上がった本書には
きちんと奥行きが出来たと思います。
 
上手なレタリングではありませんが、
(小林章さんに怒られてしまいそう…)
ぜひ実物を確かめていただけたらと思います。
 
 
あ、それから
嬉しいことにこの本の増刷が決まったそうです。
 
より多くの人たちに、
タイポグラフィの面白さを知るきっかけと
なればいいなと願っています。
本体価格4800円は本としては決して安いものではありませんが、
内容とボリュームから見れば
決して高くないと思います。
そんな思いが通じての増刷だと思うと
喜びもひとしおです。
 
 
WORKSの頁でも中面を紹介しておりますので
ご参照くださいませ。
 

よろしくお願いします。

Retro Fonts 1830-1990 世界のレトロフォント大事典 BNN新社刊
発売日:2010年6月22日
編著:グレゴール・シュタヴィンスキー

 

 

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