机から遠く離れ

机から遠く離れ



自分の中でどれだけ納得したものを作り出せるのか、そんな事を考えながらデザインをしている。グラフィックデザインにも流行があり、その流行をなぞったテンプレートで出来たようなものが溢れかえる市場を見ると、とても嫌な気持ちになるから。その環境や出会いでしか生まれ得ないようなものを作る。これから作り出すものが、どのような人が見て、使うのか、その人が住む土地や風土、何を食べ、そこに吹く風はどのような匂いがするのか。そんな事を知るために、可能な限り、足や時間を使う。
ここ数年、東京以外からの仕事が増えてきている。極力現地へ赴き、自分の中で納得の度合を高めてゆくようにしている。数年前、東京から遥か離れた地方に新しく出来る会社のロゴのデザインを依頼されたことがあった。航空機、宿、レンタカー、全て自費で行った。仕事としては赤字だったし、その2年後には組織の変更もあって、いつの間にか別の人が作ったロゴに変えられてしまったが、その時の事に関する後悔は無い。今はなきそのロゴも気に入っているし、その時に見た、地上から立ち上がる虹や、湧き水の清澄な味などは思い返す度に気持ちがほぐれるし、別の仕事への糧にもなった。ある仕事のプレゼンを受けた際も、オリエンテーションを受けに編集チームと現地に入り、打ち合わせを終え、その後二日間かけてその地方を見て回った。往復の新幹線代は出してもらったが、宿泊とレンタカーは自腹。その時点では仕事になるかわからなかったけれど、自分の中に湧いた興味を抑えこんでデザインを始めるのには抵抗があった。
約一ヶ月後、その時に撮った写真を使い、編集チームとともにかなり精度の高いプレゼンができた。中身の濃い、先方にも強い共感を示してもらえたプレゼンが出来たことで、それが仕事になるかどうかは、プレゼンを終えたその時点ではどうでも良かった。(その後正式にご依頼をいただき、その時の精算もしていただいた) 
自分としては机の上だけで生まれるものには抵抗がある。(それで良い物が出来る人も居るからこれは実力の差だろう) 
と、云うわけで明日は南の離島へ行く。初めての地だけれど、昨日別件で打ち合わせしたライターさんが口にした、「どれだけ『生活社の目線』で見つめられるか」。
その言葉を胸に、張り切って行ってこよう。(関)   




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